キョーコが社に頼んだお願いは、一日も満たずに砕け散った。 けれど、それはキョーコも、またお願いされた社も業界に生きている以上 それは無理であろう事は分かっていた事だ。 ましてや、キョーコはLMEを代表する女優だ。 しかも、4年ぶりの日本への帰国。マスコミ各社が放っておくはずもなかった。 帰国した2日後。キョーコの宿泊していたホテルには大勢のマスコミが かけつけていた。沢山のマイクが突き付けられ、キョーコが話す度に カメラのフラッシュを浴びせられる。 その光景にキョーコは日本に帰ってきた事を改めて実感しつつも 内心うんざりした気分で一杯であった。 「詳しい事は会見を開きますので今日のところはお引き取りください。」 キョ―コの気持ちを知ってか知らずかタイミングよくやってきたマネージャー 楠田祐二は、マスコミにそう言うなり、キョーコを連れホテル内へと姿を消した。 「久しぶりにフラッシュ浴びてうんざりしたんだろう?」 部屋に入るなりそう言った楠田にキョーコは、肯定するように笑みを浮かべて みせる。自分のマネージャーは本当に有能すぎて適わない。 キョーコは、改めてそう感じながら、ポツリと呟く。 「・・・・・ばれちゃったわ」 楠田は、キョーコが敦賀蓮のことを言っているのだろうと 何も言わずただ黙って聞く。 「でも・・・・関係ないのかも。だって、もう過去の女だものね私は。」 今にも泣きそうな小さな声。 その声に、楠田は思い出していた。 まだ、2人が恋人という関係だった頃を。 2人が、どういった経緯で別れたのかをキョーコが語ることはない。 楠田もまたあえて聞く事は無かった。 「キョーコ・・・・全ては時が解決してくれるはずだ。」 「・・・・そうね。」 けれど願うならばもう一度。 2人がまたあの頃のように戻る事を願う。 |