2月10日
それは、あなたがこの世に生を授かった特別な日。










あなたは知らない。きっと、思いもつかないだろう
今も私の部屋にあるカレンダーにはあなたの誕生日が記されていることを







「happybirthday・・・・蓮」




写真立てに写るのは、幸せそうに微笑んでいる私とあなた
あの頃には戻れないけれど、私の心には今も変わらない想いがあるのに




「・・・プレゼント用意しても直接渡せないくせに・・・馬鹿みたいだわ」



別れてからもプレゼントだけは用意して、いつも楠田さんと社さんにお願いして
こっそり贈り物の中に忍ばせてもらっている。
そんな私にいつも社さんは「直接渡せばいいのに・・・」って言うけど
そんなこと出来るわけがない。
だから、気づいて貰えなくてもいいの、ただ一度受け取ってくれるならで処分されても構わない。





















「で、今年も郵送物に紛れ込ませればいいのか?」


こんなやりとりも、これでもう何度目なんだろう。
そのたびに楠田さんは溜息を吐いている。
楠田さんや、社さんの言いたいことも分かるんだけど
それはどうしても今の私には出来ないことだった



「おねがいします。」


そう言って綺麗にラッピングされた小さな箱を楠田さんに渡した
箱の中身は、付き合っていた頃物欲の無い彼が珍しく見つめていた時計
そんなやりとりなんて、彼はとっくに忘れているかもしれない
もしかしたらもう持っているかもしれないけど
でも、あなたに渡したかったの。たとえ私だと気づいてくれなくても


























あなたが私に口付けるのか分からなかった



突然私の前に現れたあなたに、いきなり腕を掴まれたと思うと
逃げられないよう壁際に閉じ込められ
何かを言う前に荒々しく唇を塞がれる。その口付けの熱さに
何も考えることが出来ず、ただされるがまま――――――――――。





「んっ・・・ふっ・・・やめっ」




どうして?


ふとあなたのポケットの中に見覚えのある箱が見えた



(・・・・そういうことね)










あの二人がお節介をしないはずがなかった
社さんは本当に私を気遣って、そして楠田さんは半分は面白がってだと思う
私が贈り主だと分かるような細工をして、彼の手に渡ったのだから















「・・・プレゼント有難う。」

「いいえ。気にしないで。」


「君から貰えるなんて思っていなかったから。それにこれ・・・覚えていてくれたんだな。」







あなたも覚えていてくれたのね

そのことが少しだけ幸せな気持ちにしてくれた









「happybirthday・・・・敦賀さん」





名前が呼べないことに寂しさを感じながら
微かな痛みだけが、私にあなたを思い出させる





あなたを名前で呼べる日がまた来ればいい



そうしたら今度こそ




あなたに最高の笑顔とプレゼントを


















FIN

.............happybirthday for REN TURUGA!








微かな痛みが、私にあなたを思い出させる


(全部君だった番外編 / スキップ・ビート!)
2010年敦賀氏誕生日記念