全部、君だった
・・・09.知っていますか、私がどれだけあなたを好きかということを



楠田が蓮の元に着いた頃、キョーコは1人テレビ局内を歩いていた。
あの会見の後、さっそく仕事が入ってきたキョーコ。



とりあえず、トーク番組等は全て収録を済ませ、
お昼をどうしようかと悩み歩いていた。



「楠田さんはどっか行っちゃうし・・・あの人勝手行動多すぎよ。」


おかげで、お昼は寂しく1人で食事だわ・・・なんて呟いているとポンと肩を叩かれ
振り向くとそこには、キョーコの親友である琴南奏江と新開という
意外な組み合わせな2人が立っていた。


「え?モー子さん・・・なんで新開監督と。」
「だって、新開監督の映画に私出てるから。それより!あんたねぇ!
帰ってきてたなら、なんで早く連絡よこさないわけ!」


奏江はよほど怒っているのだろう文句をつらつらと口にする。
キョーコは、何も言えずただ静かに聴いているしか出来ない。


そんな2人の様子を傍観していた新開は面白いものを見たとばかりに
笑い始めるが、奏江の睨みにすぐやめた。





「会見見たよ。仕事の依頼凄いんだって?」
「はい。嬉しい悩みです。」
「俺も今度撮る映画に是非出てもらいたいな。」
「是非。」



3人はそのまま、食事も一緒にすることになった。
キョーコは、向こうでの話をし、奏江はその間の出来事を話した。
そして、話題はキョーコにとっては歓迎出来ない内容へと変わっていく・・・・




「キョーコ・・・私今新開監督の映画出てるってさっき言ったわよね。」
「言ったわ。」


奏江は、言いにくそうにその続きを口にした。


「その内分かることだから言うけど、その映画には敦賀さんも出てる。
それで・・・キョーコ。もう、あなた達別れたし関係ないだろうけど
敦賀さん――――。」








聞きたくない。




聞きたくない。










でも、聞きたい―――――。









キョーコは無理やり笑顔を作り奏江の話を続きを口にした。


「知ってる。週刊誌の人と付き合っているんでしょう?
帰国したその日に見たから。」



キョーコは、週刊誌に載っていた女性と蓮は今付き合っているのだろうと
思っていた。だから、その後に奏江が語った話に愕然とした。



「・・・違うのよ。キョーコ。私聞いたの。そうしたら敦賀さん、なんて言ったと思う?」
「え・・?」
「奏江ちゃん・・・やめた方が。」
「いいえ。この子には知る権利がありますから。
敦賀さんはね、週刊誌の女とは一夜を過ごしただけで名前も知らないし付き合ってもいないそうよ。
それに敦賀さん他にも関係持ってるわ。社さんも社長も何度か注意したみたいだけど・・・。」



奏江の語る事実。それは、キョーコを一気に奈落へとつき落すような言葉だった。
自分は未だに彼を愛している。でも、彼が幸せならばそれでいいと、会わない方がいいと思っていた。
それなのに・・・


「嘘・・・。嘘でしょ?なんで・・・だってあの人が社さんの、
社長の話しまで無視することなんかあるわけないわっ!」



蓮は、社を信頼している。社長には尊敬の念を抱いていた。
なのに――――――。



「・・・・・敦賀さんは、あんたと別れてから別人みたいになってしまった。」




誰か嘘だと言って。キョーコは心の中で叫んだ。
私達は駄目になってしまった。でも、彼は尊敬する人。
別れてもそれは変わらなかった。



あの日、電話口で彼に向かって言った言葉は
そんな尊敬する彼の軽率すぎる行動への忠告だった。




本当に――――あなたは、変わってしまったの。





「私のせい・・・・・なの?」




キョ―コの頬を涙が伝う。

そして、その心には深い闇が覆い被さった。