全部、君だった
・・・07.失いたくない











蓮と共に外に出ると、そこには既に蓮のマネージャーさんが来ていた。
彼は私の姿を見るなり、溜息を漏らしている。


それはそうだろう。芸能人にとってスキャンダルはご法度だ。
自分とて一応は業界人。この関係がばれるのはお互いのマイナス。
もっとも、この関係が偽りなんかじゃない真実の関係ならば話は
別なのだろうけど。




自分達のこの関係が真実のものになることはないだろう。
蓮は・・・それを望んでいない。



しかし、マネージャーにしてみればどっちにしろ嫌な問題には違いない訳で
それを分かっていながら、蓮から離れない自分はなんて嫌な女なのだろうと
心の中で自嘲する。




「蓮、その子は知らないぞ。」
「紹介してませんでした?」




蓮はわざとなのか知らないけど嫌な言い方をマネージャーさんに
した。彼が言いたいのはそんなことじゃないと私は思うんだけど?



「・・・・蓮、そんなことを言っているんじゃない。お前分かっているのか・・?」
「何がです。」





・・・ほらね?




「お前っ・・・!」



マネージャーさんは、我慢の限度が切れたらしい。
蓮に掴みかかろうとした―――――その時だった。








「はい、ストーップ!社君v」








妙に軽い口調でマネージャーさんの背後から
スーツを着た優男風の男の人が現れたのは・・・・・





蓮を見ると、どこか様子がおかしい。
この男がどうしたというのだろう。
急に表情が暗いものになっている。




「楠田さん・・・・なぜ。」






蓮の言葉に、楠田と呼ばれた男は笑みを浮かべると
意味深な言い方をした。







「可愛い後輩と、可愛いお姫様の為に・・・ちょっと君に聞きたい事があるんだ。」








可愛いお姫様・・・・?






私は、その疑問から瞬時に答えを導き出した。
何度かこの人をテレビ局で見た事がある。
確かに見た目モデルでもやっていけそうだけど
この人は違う。そうじゃない・・・・










この人―――――女優、京子のマネージャーだ・・・・








でも、どうして?どうしてこの人は蓮に?





蓮と京子の間に何があったというのだろう?







もっとも、私がそれを知るはずもなかった。
私がこの業界に入ったのは3年前。
その時、京子はこの日本にいなかったのだから――――――。