全部、君だった
・・・06.茨の鎖






社が蓮を迎えにマンションへ行くと、なんと蓮は女を連れて出て来た。
その女の顔は、社も何度か見た事がある顔だった。



なぜこんな風になってしまったのだろうか?
社には最早、蓮の考えて居る事がわからなかった。
自分が注意しても、社長である宝田に注意されても
蓮の火遊びは悪くなっていく一方だ。



社には蓮のその行動が自分を追い詰めているようにしか思えない。
仕事はきちんとしている。




しかしプライベートが問題なのだ。





蓮のように名前を知られている者には、
プライベートだろうとやはり俳優、敦賀蓮のイメージが
つねについてくる。そのことは蓮が1番知っているはずなのだ。




最近では、業界でも敦賀蓮の火遊びはちょっとした話題となっている。
蓮に聞けば、つい先日週刊誌にスッパ抜かれた女性とも寝た事があるらしい。
しかし名前は覚えていないと悪びれることなく言ったのだ。




「蓮、その子のことは知らないぞ。」
「紹介してませんでした?」
「・・・・蓮、そんなことを言っているんじゃない。お前分かっているのか・・?」
「何がです。」



社の中での限度が越えた。



「お前っ・・・!」



「はい、ストーップ!社君v」



掴みかかろうとした社を制止する声が背後から降ってくる。
その声に、社は冷静さをなんとか取り戻し後ろを振り返った。



そこに居たのは、社の先輩であり、蓮の元彼女、キョーコのマネージャ
である楠田祐二その人だった。




楠田の登場に蓮も驚きを隠せずに居た。
蓮は、テレビを見る事をあまりしない。その為に知らなかったのだろう。
キョーコが帰国したことも、会見のことも。



「楠田さん・・・・なぜ。」





楠田は、優男風の笑みを浮かべ軽い調子で告げた。











「可愛い後輩と、可愛いお姫様の為に・・・ちょっと君に聞きたい事があるんだ。」