全部、君だった
・・・61.名前を呼んで、抱きしめて、それだけで幸せだった












”奈津子”と呼ぶあなたの声と、抱きしめてくれるあなたの温もり
それだけで私は幸せだったの・・・・・・




たとえ心が私に向いていなくても





























結局、あのまま私は京子さん達と一緒にスタジオまで一緒になり
マネージャーが来るまでずっと2人の漫才のような掛け合いに付き合うことになった




「・・・・まったく楠田さんも黙っていればイイ男なのに」

「それはこっちの台詞だ。まさか、あんなに純情だった少女がこんな女になるとは
昔の俺に忠告したいもんだよ。」

「は?それこそ、こっちの台詞だわ!!まったく社さんの爪の垢でも貰ったらどうです?」

「なんだと~~~~!!!」






この二人・・・・こんなことばかり言いあっているのかしら
一般の人が見たら驚きだわ。世間一般的に知られている京子さんのイメージは
まさにクールビューティー。20代の女性が憧れるNO.1なのに








「おっさんも、キョーコもうるせぇよ」







新たな人物の出現、しかもその声の主は私の知る人物で
苦手な人物でもあったりする







「うるさいですって松太郎!!久しぶりに会ったと思ったらいきなりそれ!!
失礼しちゃうわね。まぁ、でも許してあげるわ・・・大人の女ですから」

「だぁ~~~!!お前もしつこいなぁ、松太郎って呼ぶんじゃねぇぇ!!」

「あんたはいつまでも松・太・郎よ」

「ふんっ・・・まぁいい今日のところは折れてやる。
だいたい許す許さないもねぇだろうが・・・まったく。おいキョーコ、奈津子が呆れてるぞ」




いえいえ、どうぞご自由に。私は呆れていた訳じゃなく2人の勢いに圧倒されてただけですから
なんて言えるわけもなく黙っていると、私の手を楠田さんがそっと取り
女性を魅了してしまうような微笑を浮かべている



「気の毒に・・・・驚かせて悪かったね。君はキョーコみたいにはならないようにね?」



楠田さんのその言葉にもちろん京子さんが怒らない訳がないのだが
そんな事はまるで無視している・・・・・恐るべし





それにしてもやっぱりこの人ただのマネージャーじゃないわ・・・






だってあの時、彼はそっと私の耳元で囁いたのだ



















「蓮とは何かあったの・・・・・?」と