「今日はよろしくお願いしますね。」 そう言って優しく私に微笑んでくれたあなたの笑顔に私は救われた。 そのことをきっと、あなたも知らない。そして、私自身が一番驚いていた。 それからどういう訳か三人で待合室まで行くことになってしまった。 やっぱり気が重い。だいたい自分を一度は陥れた女と一緒に居てこの人は平気なのだろうか? チラリと2人を見れば、何も知らない人から見れば恋人同士に間違えられてもおかしくないぐらい 楽しそうに話している。(内容は・・・・まぁ色恋沙汰に縁遠いものだったけど) 「懐かしい。・・・・あの頃を思い出しちゃう。」 「昨日聞いたらまだあの鶏の着ぐるみあるってよ。どうだ?着るか? 明日のちょっとしたニュースになるんじゃないか。なぁ、どうだ?」 「・・・・なんか企んでませんか?顔が気持ち悪い・・・」 「気持ち悪いってなんだ!?こんなにいい男を捕まえておいて・・・ 俺泣いちゃうぞ!!」 「ハイハイ。」 会話を聞いていると意外と彼女はテレビで見ている程のクールビューティーでは無いみたい。 なんだか夫婦漫才でも見ているかのような会話を現在進行形でしている。 楠田さんが意外とボケの要素を持っているみたいだし。 この二人、見た目に騙されたら駄目だわ。 ううん、もったいないと思う。 だって だって、 「プッ・・・・」 「「・・・笑われた・・・」」 やばいわ。やばいわよ奈津子・・・ここで笑っちゃいけないじゃないのっ でも、笑えるんだもの・・・・仕方ないじゃないっ 「プッ・・フフフっ・・・あ、ごめんなさいっ・・でもっ」 誰か私を止めて下さい。お願いだから。 ああ、すれ違う人皆私を見てる、変な人を見る目してる~~!!! 「・・・・・・・・よかった。」 「えっ・・・」 少し笑いが収まってきた私を見て、京子さんが一言そう呟く まったく意味が分からない私は、彼女が言った言葉に驚いた 「やっと・・・やっと笑ってくれたわね。奈津子さん、あなたずっと泣きそうな顔してたのよ?」 透き通ったあなたの声は、私の耳の中に溶けて消えた。 私、ずっとそんな顔していたの・・・ 「そうやって笑ってると綾織さんも年相応に見えるんだな。 まぁ、何か悩みでもあるならお兄さんに言ってみな?優しく相談にのってあげよう。」 「何か、変態くさいわ楠田さん。奈津子さん、私でよければ聞くから 楠田さんはやめておきないさい」 「なっ、なっ、なんて失礼な事を…覚えてろよ」 またも、言い合いになってしまった京子さんと楠田さん。 当分終わりそうもない様子に若干呆れつつ だけど、そんな二人に何故か私はまたも救われたのでした |