全部、君だった
・・・56.嘘を吐くというのならそれを本当にしてみせて、あなたならそれくらい出来るでしょう








「綾乃、君のことを一度も愛したことはなかったよ」




嘘だ。嘘なんだ。本当は、君を愛してる
出来るならこの腕の中に閉じ込めてしまいたいくらいに




だけど、この嘘を本当にしないといけないんだ、君の為に
もう残りの時間が僅かしかない男なんて忘れてしまえばいい・・・・。





また嘘だな。忘れてなんて  ほしくないのに











「君みたいな女、うっとおしいだけだ」














(キョーコ  君を  愛してるんだ・・・・・・)













遠くでOKサインが出ても、私達はそこから動くことはなかった
あなたは、今演じていなかった。それに気づいてるのだろうか
きっと気づいているのは私だけ。最後のセリフの時、一瞬瞳が揺らいで、顔を反らした
このシーンで必要とされているのはそんな表現ではないはず
なのに、なぜ・・・・監督はOKしたのだろう。





その場から動こうとしない私達に楠田さんと社さんが駆けてくるのを横目で確認しながら
私は一歩、また一歩と彼に歩み、影が重なるくらいの距離まで近づいて












「嘘を吐くというのならそれを本当にしてみせて、あなたならそれくらい出来るでしょう」









今のあなたには何も、感じない







そう   なにも








すれ違い続ける二人・・・・・想いが重なるのはまだ――――――――――。