全部、君だった
・・・52.何を愚かというのか、それすらも忘れてしまったけれど







「・・・・と、冗談はここまでにして、本題聞こうか。
あ、勘違いするなよキョーコ。俺はどんな美人が誘惑してこようとも
お前が一番可愛いからな!!」







分かってる。そんなこと今更言わなくてもちゃんと分かってるから。
あなたが、どんな時でも私の楯になってくれていたから。
私がこの世界にこれたのもあなたが上に上手く言ってくれていたからなんだから・・・・。















「楠田さん。私のスケジュールに増やしてほしい仕事があります。
今からじゃきっと厳しいことだと思うけど、でも絶対入れてほしいの。」




待ってて、蓮。
今度は私があなたの目を覚ましてあげるから。
あなたは覚えていないかもしれないけど、あなたが私に夢の扉を開いてくれたの。
自分の事はとことん無頓着で、だけど演技に関しては誰よりも厳しかった。
厳しいながらもそこには優しさもあった。






私、あなたに・・・・・・すごく憧れてたのよ?
あなたが冗談で私に触れる度に心臓が破裂してしまいそうな程ドキドキしたんだから。












「それは・・・・敦賀蓮主演の「初恋」」







噂では、撮影はだいぶ時間がかかっているらしい。原因は、彼のスランプ。
最初は順調だったらしい撮影もあるシーンになるととたんに別人のように
演じられなくなったらしくこの話は、今や業界中に広まりつつあった。
スランプ知らずの敦賀蓮がまさかの状態に。


この作品の監督は新開監督。幸い私は何度か彼の作品に出たことがある。
無理かもしれないが、一か八かの賭けに出るしかない。
ヒロインはまだ決まっていなかったはず。





クスッ・・・・。
こんなにも一つのことに執着したことがあったかしら。
何を愚かというのか、それすらも忘れてしまったけれど
今回は、今回だけは・・・誰が何と言うとこの仕事をとらなくちゃいけないの。




愚かな女が愛した、たった一人の為に。