社長室に訪れると、以前とは変わらない、けれど少しだけ疲れた顔をした姿があった。 思えば、私はこの人のおかげでこうしてこの芸能界にいられるというのに 私は何一つ恩返しが出来ていない、ううん、それどころかまた迷惑をかけてしまった. 「お時間をいただき有難うございます社長。」 この人には、どれだけ謝ってもきっと足りない。 それでも、私は謝り続けなくちゃいけない。 そして、その為にこの世界に立ち続けなくてはいけない。 「ずいぶんと長い旅行をしてきたようだね。」 そう、長い・・長い旅のようだった。 あの人の、私の知らない姿が悲しくて。 そして、あの人を傷つけたことに今更気づいて。 自分の心を覆うように広がる闇。 醜い心。後悔と罪悪。 だけど、そんな私を救いあげてくれた尚との生活。 今でも彼を思うと胸を締め付けられる。 ごめんなさい ごめんなさい (それでも・・・あなたを思う私を許してほしい) 「おかえり、京子」 社長のその声に、頭を上げると同時に暖かい温もりに抱きしめられる。 そして、背に回された手が、優しく頭を撫でる。 その手があまりに優しくて、涙が溢れ出す。 こんなに迷惑をかけたのに。 本当なら見捨てられても当然なことをしたのに。 「ただいま帰りました。社長。」 また、この世界に戻ってこられた。 だから、私はもう一度女優に戻るの。 最上キョーコから京子になる。 答えなんて何処にも無い、あるのはただ――――――・… |