全部、君だった
・・・45.手を繋いでいるはずの君がひどく遠く思えた











「ねぇ、尚。もう一度、子供の頃に戻れたならやり直せるのかな・・・?」






突然あいつの口から零れ落ちた言葉。






突如とした、その言葉に俺は返す言葉がなかった。
ましてやいつものように笑ってごまかすなんてことも出来るはずもなく。
今の俺には手を繋いでいるはずのあいつがひどく遠く思えていた。
それぐらい・・・・・あいつの表情が本当に寂しげで。
その表情に、今にもここから消えてしまいそうなそんな錯覚さえ感じて・・・・。


俺に出来ることといえば
ただ、ただあいつの手を力いっぱい握りしめてやることだけだった。













・・・・キョーコ。

お前の心の中には今もあの男がいるのか?

そんなにつらくても・・・お前はまだあいつを好きなのか?





・・・キョーコ。

俺もお前と同じように何度か思ったよ。

だけど、過去には戻れないし 振り返ってばかりじゃ駄目なんだ。

だから俺は、今、自分に出来ることをただやっていく。

仕事に対しても  お前に対しても







だから  お前も








お前が今出来ることを――――――――――。












俺は、キョーコと別れると、ある人物へと連絡を入れる。
キョーコがもう一度、女優として輝く為に。








「お久しぶり。楠田さん。あんたに知らせたいことがある」





「今から俺が言うところへ来てくれないか」



















「そこに・・・・・キョーコを連れて行くから」