私は、なんて愚かな、哀れな女なのだろう。
あの日、そう思い知らされた。
あの日、大勢の人が行き交う中で私を見つけてくれたのは 今も心の中に残る彼なんかじゃなく、過去に憎しみを抱いたこともあった
幼馴染の松太郎だった。人だかりの中。自分へと向けられる好奇の眼差しを無視し私のもとへ
必死に走ってくる姿を見つめながら、どうしてあの人じゃないのだろう、私はそんな風に思っていた。
「もう、泣くな・・・・1人で泣くなよな・・・キョーコ。」
そんな私の心なんて知らない松太郎は、優しくそういうと黙って私を抱きしめた。
ねぇ、松太郎。あんたが私を今も好きでいてくれているの知ってるの
だから、あんたのその気持ちに、優しさに甘えてしまう私を許さないで
私はあんたが思っているような女じゃない、自分勝手な女なの
だから、今だって彼には、もう大事な人がいるのに
彼の大事な人を傷つけてしまったのに、どうして、今もまだ彼を忘れられない
求めてしまう自分の愚かさに唇を噛み締める。
噛み締めた味は血の、鉄の味だった
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