全部、君だった
・・・03.あなたの熱で、私にどうか火傷負わせて



切られた電話をいつまでも見つめて固まっている蓮に
それまでベッドから様子を見つめていた女は、
面白いものでも見たかのようにクスクスと笑う。


「奈津子・・起きていたのか」
「どうしたの?マネージャーさんに怒られた?」



女の―――奈津子のからかうような声に蓮は、
平然を装いベッドの上から身体を起こし、そう言う奈津子の唇を塞いだ状態で
身体をベッドへ沈めていくと先程までしていた行為を再開させていく。



「敦賀蓮熱愛発覚だって。」



自分のことを他人事のように語り自分を抱く蓮に甘い声を出しながら奈津子は、
さびしい男だと思う。



2人の関係に愛情はない。少なくても蓮にはないだろう。
ただ、自分達が寂しい時に会って寝る。
たったそれだけの、そっけない関係だ。




「・・・・・そう。今度は誰?」



「知らない。」



その言葉に身体の熱とは反対に冷めたような感覚が襲う。
この男が自分以外の女とも、こんな関係を持っているのは承知していた。
だが、知らないとはどういうことだろう。



名前も知らない女をこの男は抱いたというのか。




「・・・・蓮っ・・・んっ・・・あなた、いつか・・刺されるわね。」



「そうかもな。」




この男には何を言っても駄目なのかもしれない。
蓮の腕に抱かれながら、奈津子はそう思った。




愛情のない関係はいつか終わりがやって来る。
ましてや蓮には自分以外にもこんな関係の女がいる。
別れを切り出せば、この男は簡単に自分を手放すだろう。



(でも、自分からは言えない。この人を離したくはない)



奈津子は自分もどうしようもない女なのかもしれないと
心のうちで苦笑を浮かべた。
それでもいい。少なくても彼は自分を覚えている。
それこそ週刊誌の女とは違うのだから。


「私の事・・・好き?」


奈津子の突然の言葉に蓮は行為を辞め少し驚いた表情を浮かべる。
なぜならば、奈津子がそんな風に聞いてきたことはなかったからなのだが
蓮はすぐに笑顔を浮かべると奈津子の耳元に低く囁いた。


「好きだよ・・・もちろん。」


奈津子には、それが本心ではないだろうことは分かっていた。
けれど、どうしても彼の口から聞いてみたかったのだ。
それが例え偽りの愛の言葉だろうと―――――。