全部、君だった
・・・37.消えない声のありか
冷たい暗闇の中、今も頭の中で響く言葉・・・・消えない声。




「ごめんなさい・・さよなら。蓮」



あの日・・・・4年前のあの日も、彼女は同じ言葉を残して俺の前から消えた。
自分の夢の為に、自分の誇りの為に・・・・・。
君と過ごしていくうちに、君という存在は俺の中でなくてはならないものになっていった。
それと同時に俺は・・・・不安でたまらなかったんだ。日々、輝きを増していく君に誰もが魅了されていった。
それは彼女が、女優「京子」が認められた証。俺にとって嬉しいことでもあり・・・つらいものでもあった。
・・・俺だけの「キョーコ」じゃなくなっていく君。いつか君は、この腕の中から飛び出していく。




不安と、醜い独占欲。
けれど、そんな感情を隠し俺はキョーコとの幸せな日々を送っていた。
そう・・・・・あの日までは。



「蓮。お願い聞いて・・・・」
彼女の次の言葉は分かっていた。とうとう来てしまった・・・・この日が。
聞きたくなんかない。離したくない。


「私・・・・もっと演技の勉強をしたいの。だから」
「演技の勉強なんかここでも出来るだろう。それとも・・・・ここじゃあ出来ないとっ!?」



溢れ出す感情。
今まで彼女を怖がらせたくなくて隠してきたものが溢れ出していく。




「蓮・・・っ、落ち着いて聞いて!」



「君は・・・・俺と別れても平気なのか?」



「蓮・・・・違う、そうじゃない。そうじゃなくて・・・・んんっ・・・!?」





君の言葉なんて聞きたくない。
俺は無理やり彼女の唇を塞ぎ、その場に押し倒すと強引に彼女を抱いた。
俺の思いをぶつけるかのように。
そして、俺から離れられないように・・・・俺のことしか考えられないように。







「やめてっ・・・おねがっ・・・・もうっ・・・」
「うるさいっ・・・」





彼女の悲鳴のような声を無視し
何度も、何度も・・・彼女の身体を犯し続けた・・・
彼女の悲鳴など聞こえないように・・・ただ、その細い身体に自分の欲望をぶつけた。








「ごめんなさい・・・さよなら。蓮」





その次の日、彼女はそう言って俺の前から去っていった。
彼女は、昨夜のことなど何も言わなかった。
ただ、その別れの言葉だけを残し去っていった。




愛した少女をこの手で犯した。何度も、何度も彼女は泣いて許しを請うていたのに。
俺の中には最早、彼女を犯したという罪悪感と虚無感だけが残った。
そして自分の犯した罪を、俺はまるで彼女のせいのように自暴自棄に生活してきた。







そして、君をまた傷つけてしまった―――・・・・