全部、君だった
・・・33.どれだけそばにいても一人だね

ねぇ蓮  貴方が教えてくれたのよ。感情を押し殺して、そう・・まるで人形のようだった私に
貴方が教えてくれたの、「好き」って言葉と「愛してる」って言葉。
だから今度は私が・・・・あなたの為に動くの。







ただ、がむしゃらに外へ飛び出した。これ以上あんな蓮を見てはいられなかったから。
ううん・・・違う。私が耐えられなかっただけなのかもしれない。
季節は冬。風が冷たく刺すように吹いている。
けれど、今彼の部屋へ戻る気にはならなかった。
感情に任せて言ってしまったあの言葉は、ずっと私が心の内に秘めていたもの。
でも、けして言うつもりなんかなかった。
言ってしまったら彼の前で今までどおりに接する自信なんてなかったから。
築き上げたものが壊れそうな気がしたから。




「あんなこと・・・・分かっていたはずなのに」
分かっていたはずなのに――――言わずにはいられなかった。
蓮の心には今もあの人がいる。そして、あの人の心にも蓮がいる。
そんなことは、分かっていた。あの人と会った・・・あの日に。
蓮・・・・そう呼んだあの人の声はとても優しくて、悲しげだった。
彼を見る目は、今にも涙で濡れてしまいそうなほど潤んでいた。
芸能界での地位と名誉を確立した彼女の瞳は、一人の男を愛する女の瞳だった。






ねぇ蓮。
貴方が教えてくれたの、「好き」って言葉と「愛してる」って言葉。
そして・・・・その苦しみも。一人の人を思う事が、こんなに苦しいなんて思わなかった。
貴方やあの人は、こんな苦しい気持ちを4年間も抱いて・・・。
私が会いに行くべき人物は、彼だ。
彼に会って・・・そして京子さんあなたに会いに行く。