全部、君だった
・・・32.ただ愛しくて愛しくて愛してほしくて



蓮は悪くない。
どうして、あなた達はこの人ばかりを責めるのよ。




「そんなっ!そんなこと・・・知らないっ!あの人がどうなろうと、どうしようと、
私と蓮には関係ないじゃないっ!どうして蓮を責めるのよっ!!」




奈津子のその言葉に、奏江の平手が飛ぶ。
奈津子を打った奏江の頬には涙が伝っていた。



「・・・・・そうね、あなたには関係ないわね。
キョ―コが居ない方が、あなたにはいいわよね。
そうすれば、あなたの愛する敦賀さんの心はあなたのものになるもの。」






奏江のその言葉は、まるで奈津子の心を見透かしているような言葉だった。






蓮にも言った事もない自分の気持ち。
蓮の心には未だにキョ―コがいる。そのことを知っていた奈津子にとって
キョ―コは手の届かない忌まわしい存在でしかなかった。





「・・・でも、私達には必要なのよ、あの子の存在は。もちろん、敦賀さんにもね」






奏江はそれだけを言うと、尚に帰るよう促し、自分もまた出て行った。
残された、蓮と奈津子の間には重々しい空気が流れていた。




「奈津子・・・」


「・・・・よね。・・・かなわないわよね。あなたの隣に居るのは私なのに
あなたの心を埋めているのは、今もあの人なのよ。本当・・・なんなのよっ」



あなたを想う気持ちは誰にも負けない。
それでも、あなたの心に・・・・あの人が居る限り
私には・・・・・・・・。







だからね  蓮。



私、決めたわ。



あの人に、会いに行く。





会って確かめるわ。