全部、君だった
・・・02.心臓が何度も壊されるのに、まだ好きで



「敦賀蓮の名前も落ちたものね」






そう言うなり勝手に電源を切り女は社に携帯を返してくる。
社は女の方へと向き直し、その容姿をまじまじと見つめた。
女は腰の上辺りまで髪を伸ばし、サングラスをして
少し申し訳なさそうにするとサングラスを外し、自分の正体を明かした。





「ごめんなさい。それと、お久しぶりです社さん。」



少し照れくさそうに笑う顔には見覚えがあった。
社の記憶の中でまだ少し幼い印象だけど
目の前の彼女は綺麗な大人の女性へと変わっていた。






「キョーコちゃん・・・・」


彼女の名前は最上キョーコ。
芸名「京子」 LMEを代表する俳優の1人。
そして――――蓮の恋人だった・・・





「キョーコちゃん。いつ日本に?」
「昨日です。昨日成田について・・・今日は社長に報告に。」




キョーコに時間を少しだけ貰うと社は様々な事を聞いた。
キョーコの話では、あっちにいる間も定期的に帰国するマネージャーに頼んで
雑誌を買ってきてもらっていたそうだ。



だから蓮の女関係も当然ながら目にしていたらしい。



「・・・・社さん。彼には私の事まだ言わないでおいてくれますか。」
「どうして――――。」
「4年前―――私が外国に行くと、言った時、蓮・・・ううん敦賀さんは別れを選んだ。 私が彼を裏切ったからですが・・・だからこんなこと言うなんて可笑しいかもしれないけれど、私は今も敦賀さんが好き。だから、週刊誌の記事にも正直まいりました。 そして・・本当に別れたんだなぁって実感しました。 でも、今はまだ会って普通に出来る自信が私には・・・・だからお願いします。」





頭を下げるキョーコに社は頷くことしか出来なかった。
さっきの電話での言葉・・キョーコがどんな思いで言ったのかは 社にも分からない。
そして、その言葉に蓮がどう思ったのかも。


社が思うに蓮もきっと・・・まだキョーコを愛しているのだろう。
だけど、それは自分が言うべき言葉ではない。
蓮本人が言う事だろう。




社は、そう思い喉まで込み上げてきていた言葉を飲み込んだ。