社に連れられ蓮が訪れた都内の総合病院。 急ぎ足で向かった集中治療室の前には、楠田の姿とそして社長である宝田と椹、松島。 そして松島から連絡を受けたのか、撮影現場から駆けつけて来た奏江の姿があった。 二人が歩みを止める。奏江は、社と共に現れた蓮の姿を見つけるなり蓮に対し怒りを露にした。 「あなたに・・・・ここに来る権利なんてないわっ。あなたは・・・ 自分だけがまるで苦しんでいたとみたいに思ってるもの。キョーコも苦しんでいたのに、 あの子は・・・あなたを思ってずっと自分を責めてたのに・・・・」 そう蓮に吐き捨てるよう告げた奏江だったが彼女もまた自分を責めていた。 「・・敦賀さんは、あんたと別れてから別人みたいになってしまった。」 あの時、自分が余計なことを口にしなければキョーコを追い詰めることはなかったかもしれないと 「・・・・落ち着くんだ。琴南さん。」 「・・・・はい。」 奏江を宥めるように話掛けながら、楠田は視線だけを蓮へと向ける。 「敦賀君。俺は、今回のこと君のせいだとは思っちゃいない。 だがな―――――――キョ―コにもしものことがあれば俺は何するかわからない。」 普段と変わらぬ落ち着き払った表情。だが、その瞳には明らかに怒りが混じっていた。 「社君。その時は許してほしい。君の大切な彼を俺はどうにかしてしまうかもしれない。」 楠田のその言葉に、社も、そして蓮も何も言えずにいると、それまで黙っていた宝田が口を開けた。 「楠田君・・・君も落ち着いたほうがいい。それに、その言葉はまだ早い。 彼女は、この扉の向こうでまだ戦っているはずだ。自分の気持ちとな。」 長い、長い時間だった。 そして閉ざされた扉が開く。 |