その日は怒涛の勢いで過ぎていった。楠田から宝田へ連絡が入ったその数時間後には電波を通し 【女優 京子】の無期限の活動休止という情報が流れていた。その突然の、しかも本人不在での その発表に対し理由を求める声は当然各報道メディアから上がる。それは事務所としても想定していたが、まさか本当の事を話すわけもなく事務所側はたった一言「休止」としか告げることしかなかった。 今や日本を代表する女優となっていた京子の突然の休止。 それは、時が経つにつれメディアだけではなく芸能界全体を揺るがす事態にまでなっていた。 「キョ―コが無期限活動停止?」 同じ芸能界に存在し、幼馴染でもある尚にも当然その事は耳に入らないわけもなかった。 「みたいね・・・どうかしたのかしらキョーコちゃん?」 「どういう意味だよ祥子さん。」 祥子のなんとも意味深な言い方に尚が聞き返すと彼女は「だってそう思わないの?」といった 表情を浮かべる。 「ほら、普通活動休止するにしてもよほどのことじゃない限り本人が何らかのコメント、 もしくば会見をするものよ?それが今回は本人不在、それどころかキョ―コちゃんからのコメントも無し。 LMEから詳しい事情説明も無し。LMEはただ「休止」としか発表しない。ね・・おかしいと思わない?」 祥子の話を聞き、尚は確かにそうだと思えた。活動休止を発表するからには何か事情があるはずだ。 ましてや礼儀や作法には昔から煩いキョ―コだ。コメントも何も無しでただ休止というのはおかしい。 「何があったっていうんだよ?」 彼がその真実を知るのはその数時間後――――――――――――――。 そして、彼らの時間が動き始める。 |