楠田から連絡を受けた宝田の行動は早かった。楠田からの電話を切るなり、 すぐ内線で各部門の主任を呼び出し要点だけを告げると、今度は彼らへ マスコミ各社やキョ―コのスケジュール調整するよう事細かな指示を送る。 「このことが外にばれない様くれぐれも注意してほしい。いいか?これは重要極秘事項だ。」 普段とはまるで違う宝田の表情と口調に誰もが事の重大さを感じざるえない。 室内は途端に緊迫した雰囲気になった。そんな中で、ある人物が口を開く。 「社長。このことを蓮に言わなくてもいいんですか?」 椹だった。 彼もまた、キョ―コと別れた後の蓮を心配する一人だった。 彼の口から出た名前にまたも室内は静まり返る。 「・・・・・椹君。今、このことをあいつに言ってどうなる?あいつが元に戻るとでも思うのか? 俺は、そう思わないが・・・?」 「しかしっ」 「・・・・・今は、京子を心配するのが先じゃないのか?今でこそ君の担当ではないが 彼女のデビュー当時のセクション担当は君だ。君は心配ではないのか?」 「・・・・・・・・・分かりました。」 宝田の厳しい言葉に椹は口を閉ざし、それ以上告げることはなかった。 これ以上は時間の無駄だと感じたのだ。それに宝田の言う通りなのだ。 (今は・・・・最上さんの方が危ない・・・・) 椹の脳裏に浮かぶのは、キョーコと蓮の仲睦まじい姿だった。 (どうして、あの子の手を離してしまったんだ?蓮?) |