全部、君だった
・・・20.たとえそれが泡沫の夢でも
「いつでもいいので一日休みをもらえませんか。」


キョ-コは、俺の顔を見るなり突然そう言った。その言葉を俺はとくに気にすることもなく、
ただ単純に「言われてみれば日本に帰ってきてからろくに休みを取らせてやっていなかったな・・・」
ぐらいにしか受けとらなかった。このことが後に大変なことを引き起こす事となるとは
まったく思いもしてはいなかった。そんなわけで、、俺は何日かかけて事務所で
スケジュールの整理をし一日だけオフを作ったのだ。



なんとかスケジュール調整をし休みを取ることが出来た俺はキョ―コをマンションへ送り
下ろす直前で一応羽目をはずさないよう釘をさしておくことにした。
「明日の夜明後日の事で電話するからな。羽目を外しすぎるなよ」
軽い口調でそう言った俺にキョ-コは小さく笑うと、それから急に真顔を浮かべた。
「楠田さん。有難う。」
「なんだ?気持ち悪いな。どうかしたのか?」
「ううん・・・たまにはね。」
思えばこの時気づいていればよかったのだ。キョ-コの異変に。
だが、俺はその異変を見逃してしまった。





「ゆっくり休めよな。」
「はい。」







そんな話をしたのは、蓮とキョ-コが再会して、一週間程経った日の話だ。
そして、今俺の目の前には―――――――。








「キョ-コ?おい・・・キョ―コ?」






人形のように身動きしない横たわったままのキョ-コの姿・・・。