全部、君だった
・・・29.嘘に埋もれた言葉の中から真実をみつけだして
キョ―コの突然の活動停止の理由がLMEの社長によって明かされた。
もっとも、その会見には不自然さがにじみ出ていたが。
そう、LMEはその理由をただの「病気」の為だと言ったのだ。
にもかかわらず、京子の病状、病名などは一切語られることはなかった。
俺は、そのなんとも不自然な会見を、大勢のスタッフ達が行き交っている
秋の2時間ドラマの撮影現場から見ていた。





「この会見・・・変だと思わないか祥子さん?」
「え?」
「仕事に関して業界一厳しいと言われるあのLMEの社長が・・こんな中途半端な・・・おかしいよな。」
「そう・・・あ・・・・・・・」


「仕方ないでしょ。会見で簡単に話せる内容じゃないんだから」

祥子さんの声を遮るように降ってきた若い女の声。
その声の方へと顔を向けるとそこには、演技派女優として
今多くのドラマや映画に活躍している琴南奏江が立っていた。
彼女は俺が出るこのドラマの主演女優でありLMEに所属する・・・・キョ―コの友人である。



「おい、どういう意味だよ・・・・それ」
「そのまんまの意味。・・・そのまんまのね」



その声は、なぜかとても悲しげだった。
そして、その整った顔には、何かに対し怒っているようだ。




「・・・その理由、教えてくれないか。」
「聞いてどうするつもり?マスコミにでも売るつもり?」
「まさか・・・そんなことしねぇよ。ただ、知りたいだけだ。真実を。」






そう真実を知りたいんだ。あいつに何があったのか。










「・・・・・・・・・・・・・いいわ。でも他言無用よ。」