全部、君だった
・・・19.いつだって、この手を伸ばせた

テレビを付けると、キョ-コがゲスト出演するトーク番組が何の因果なのかしらないが放映されていた。
話し掛けてくるMCに『女優』として相応しい微笑を浮かべ話す姿に俺は、
おとつい交わした会話を思い出していた。










『私は・・・・今もあの人が好き・・・でも、あの人は違うの・・・・』

今にも泣きそうな程切ない声であいつはそう言った。
すぐ傍にいれば、この腕で抱き締めてやれるのに、あの男の事なんて忘れろと言ってやれるというのに・・・。







------------何も出来ない自分に腹が立った。






そして、何よりも。
自分からキョ-コを手放したあの男、敦賀蓮を憎く思った。
あの男は、キョ-コを捨てたんだ。そして、自分との約束も果たさなかったのだ。
そう・・・それは、まるで自分が裏切られたような感覚。
自分こそ一度はキョ-コを捨てているというのにこんなこと言うのは変なのかもしれない。
だが、許せないものは許せなかった。
あれほど求め、手に入れたキョ-コをなぜあの男は、こうも簡単に手放したというのだ。











「キョ-コを幸せにする。誰よりも・・・」








それは キョ-コの知らない「俺」と「あの男」との約束。
あの時、敦賀蓮ははっきりと自分にそう言ったはずだ。幸せにすると。泣かせないと。
それなのに・・・・。








あの男は、キョ―コを裏切り、そして俺との約束までもやぶったのだ。







「早く・・・あいつの事なんか忘れろよキョ-コ。」










なぁ・・・キョ-コ






俺は今もまだお前の涙に弱いんだ・・・・







だから泣かないでくれ。