全部、君だった
・・・17.ただひたすら好きでした


4年ぶりに訪れた彼の部屋はあの頃と、どこも変わってはいなかった。
変わってしまったのは、私と彼の関係。今の彼の隣りには、私ではなく奈津子さんが居る。
ただ、そこだけが変わってしまっただけ。その光景は、私が居た場所は、
今はもう・・・私の場所ではないのだと私に改めてそう実感させた。







優しく微笑むその顔も、見つめるその瞳も・・・・・
もう私に向けられる事はない。そう分かっていても、無意識に彼の名前を呼んでいた。
けれど、それと同時に彼も名前を呼んでくれるだろうかなんて期待もどこかに混じっていたような気もする。





「久しぶり・・・最上さん」

けれど、彼は”キョ-コ”とは言わなかった。そして、感じたのは彼と私の決定的な距離。
ちゃんと笑えているのか心配になった。目じりに熱いものを感じた。けれど、泣いてはいけない。
泣いても、もう・・・その涙を拭ってくれる存在はいないのだから。









蓮・・・・・ごめんなさい。



私は、あなたを傷つけたけれど。





それでも、やっぱり・・・・愛しているの








「さようなら・・・愛する人。」








私は居なくなるから。


あなたの前から居なくなるから。





だから幸せになって・・・・・・・。





心の中で、今も愛する、近くて遠い存在になった彼へ
私は別れを告げた――――――――――――。