全部、君だった
・・・16.今はただ目を閉じて





奈津子が中々こちらに来ないことに異変を感じた俺は
深く考えることもなく奈津子と社さん達を出迎えに行った。




だからこそ驚いた。
予測出来なかった人物の姿に。













4年ぶりに出会う彼女の姿に。










4年前よりも大人びた彼女は奈津子と何かを話していた。
その表情には誰もが見惚れてしまうほどの優美な微笑を浮かべている。
だが、俺は思っていた。4年前よりも確かに彼女は綺麗になった。
けれど、その姿にはどこか儚げな危なげなものが加わった、と。








そんなことを思いながら立ち尽くしていた彼女の瞳が俺を捕らえる。







「久しぶりね・・・・蓮。」






彼女は俺を「蓮」と呼んだ。
あの頃と変わらぬ笑顔を浮かべて。





それは、とても懐かしく暖かいもので。
この腕で抱き締めたいと、俺は思っていた。






だが、その反対に心の中で誰かが言うのだ。




「お前にその権利はあるのか」と。




そうだ。
あるわけがない。
あるはずないんだ。


俺は彼女を捨てた。
愛していたのに・・・・・捨てた。
ひどいことも言った・・・・。





そう・・・あの頃に戻ることはもう出来ない。
それだけ、時が経ち、それだけ俺は君を裏切ってきたのだから。









キョ-コ・・・俺は今決断したよ。





君を愛している。




けれど、その想いを俺は今捨てることにした。




だから







「久しぶり・・・・最上さん。」






俺が君の名前を呼ぶ事はもう---------------








ない