全部、君だった
・・・13.瞼に残るのは君の残像


キョ-コは、今にも消えてしまいそうなほど哀しげな瞳をし静かに語り始めた。



「私がアメリカ行きを決めたときのこと覚えていますよね。」



覚えているさ。忘れるはずがないじゃないか。
キョ-コが俺に初めて逆らったあの頃を。




『本気かキョ-コ。今日本を離れて、再び戻ってきても今の地位はないかもしれないんだぞ。』
『分かってます。でも・・・私は、上を目指したくなったんです。』
『だが・・・』
『私の求めているものは日本では得られない。』




あの時のキョ-コの瞳を覚えている。
あんな瞳を向けられたら折れるしかなかった。





「私はあの頃、もしかしたら彼に甘えていたのかもしれない。この人なら
待っていてくれる。分かってくれるって----・・・・でも、それは私の考え違いでした。
いいえ、私が馬鹿だった。私は、私をはじめて本当に愛してくれた人を裏切ってしまった。
蓮は---いいえ敦賀さんは、私に愛を与えてくれると同時に私にも求めていたんです。
私は分かっていたはずなのに、いつの間にか忘れてしまった。」



キョ-コにとっても、彼にとってもお互いは無くてはならないほど大切な存在だった。
だからこそ、脆く崩れたのだろう。




お互いを強く思うあまり。
強く求めるあまり。




「・・・・・・そうか。」





あの頃、2人がもう少し大人であったなら結果は違ったのだろうか。
それとも、2人の心が脆すぎたのか-----。




それは今はもう分からないけれど。