キョ-コは、今にも消えてしまいそうなほど哀しげな瞳をし静かに語り始めた。 「私がアメリカ行きを決めたときのこと覚えていますよね。」 覚えているさ。忘れるはずがないじゃないか。 キョ-コが俺に初めて逆らったあの頃を。 『本気かキョ-コ。今日本を離れて、再び戻ってきても今の地位はないかもしれないんだぞ。』 『分かってます。でも・・・私は、上を目指したくなったんです。』 『だが・・・』 『私の求めているものは日本では得られない。』 あの時のキョ-コの瞳を覚えている。 あんな瞳を向けられたら折れるしかなかった。 「私はあの頃、もしかしたら彼に甘えていたのかもしれない。この人なら 待っていてくれる。分かってくれるって----・・・・でも、それは私の考え違いでした。 いいえ、私が馬鹿だった。私は、私をはじめて本当に愛してくれた人を裏切ってしまった。 蓮は---いいえ敦賀さんは、私に愛を与えてくれると同時に私にも求めていたんです。 私は分かっていたはずなのに、いつの間にか忘れてしまった。」 キョ-コにとっても、彼にとってもお互いは無くてはならないほど大切な存在だった。 だからこそ、脆く崩れたのだろう。 お互いを強く思うあまり。 強く求めるあまり。 「・・・・・・そうか。」 あの頃、2人がもう少し大人であったなら結果は違ったのだろうか。 それとも、2人の心が脆すぎたのか-----。 それは今はもう分からないけれど。 |