全部、君だった
・・・11.凍った息

それから2日後。社から楠田の携帯へ連絡が入った。
楠田は自分の手帳を広げ素早く調べると1つ返事で了解する。


携帯の電源を切り、楠田は手帳にそのことを書き込みながら
ふと撮影中のキョーコを見た。



(傍から見れば元気そうなんだけど・・・・どうかしたのか?)


化粧で分からないようにしているつもりでも
長い時間共に行動している楠田の目はごまかせやしない。
しかし、なんでも自分が手助けしていてはキョーコの為にもならない。
それにキョーコとて、いちいち自分に干渉されるのは嫌だろうとも思う。




楠田は少し気にはなったが、その場ではとりあえず気付かなかったことに
した。この行動を楠田は後に後悔するのだが、この時はさすがに勘の鋭い
彼も気付いてはいなかった。









撮影が終わって車を走らせながら楠田はキョーコにぎりぎりまでふせていた
今日のこれからの予定を告げる。


「キョ−コ、これから行くところはスタジオでもテレビ局でも事務所でもない」

「?」

「これから行くところは・・・・お前もよく知っているところだ。」

「私の・・・よく知るところ?」


キョ−コの顔色に少しばかり影がさす。
車は丁度赤信号で止まり、楠田はキョ−コを見て告げる。






「敦賀蓮・・・・彼のマンションだ。」