全部、君だった
・・・004.あの時二人で交わした約束は、今はもう消えてしまった(上)


――――――2月10日。


その日は私が一番大切な人が生まれた記念日である。
そして、私達が想いを伝えあった日でもあった・・・・・・。


あれから3年。
お陰様でお互い公私共に順調に行っているのだが、
しかし、この頃は擦れ違いばかりの日々が続いていたりする。
私がお休みになれば、彼はドラマの撮影だったり映画の撮影だったり。
そして、その逆も然り。
それでも、電話やメールで連絡は取り合っているので
完全なすれ違いという訳でもないのだけれど。


だけど、私はこの日だけは休みにしてほしくて
2か月も前から楠田さんに頭を下げて頼みこんで
初めは渋い顔をされたのだけれど、それでもしつこく頼みこむ私に
楠田さんはお手上げとばかりに条件付きでお休みにしてくれた。


その条件は私にはあまりにもつらいものだった。
「ウィンドウショッピング禁止」
「長電話禁止」
「仕事をみっちりやりこなせ」
というもの。


「仕事はいいけど・・・長電話も我慢する。だけど、このウィンドウショッピングだけは!!」


芸能界に入って、女優として知名度も上がってきた私。
だけど、これだけはやめられなかった。
親友からは「あんた、そんなことしなくても買えるんだから買いなさい。」と言われている。
それはそうなんだけどね。でも見ているだけで癒されたりもするから
結局は止められないのよね。




「だ〜め。約束守れないなら、お休みは無し。
あ〜ぁ、蓮悲しむだろうなぁ。彼女が自分よりもウィンドウショッピングが大事なんて」




意地悪だ。絶対、今の言葉はわざと言ってる。
だけど、私がその言葉に逆らえるはずもなく・・・・・。



















「2か月長かったわ・・・・」




走馬灯のように浮かぶ我慢の日々。
そしてあざ笑うかのように笑っている鬼マネージャーの顔。




だけど、彼が笑ってくれるなら、それでいい。
それだけの思いで、1日オフに出来なかった彼を残念に思いながらも
彼の部屋から見送った。






それは、もう10時間も前のお話。
そして、現在19時。私は我慢の限界を超えて怒っている。
だけど、それは本当に楽しみにしていたから悲しい感情のの裏返しなのかもしれない。






「敦賀蓮のバーカ、バーカ・・・バーっ」






何回罵っても、彼は居ない。
この広い部屋の中で私は今、ひとり。



明かりを点ける気にもなれず、部屋の中は暗い。
テーブルには、気合いをいれて作ったケーキと料理。
そして彼へのプレゼント





→(下)に続く