「約束よ?蓮。お互いにどんなに仕事が忙しくても 互いの誕生日だけは一緒にお祝いするって。絶対だからね」 そう約束したのはいつだっただろう?今となっては懐かしい幸せな思い出。 あの頃ちょうど俺も彼女も互いにスケジュールがいっぱいで 会うことも出来ないすれ違う日が続いたんだ。お互いに寂しかったのかもしれない。 そんな時だった、彼女が二人だけの約束を決めたのは・・・・ それから4か月経った、2月10日。 俺の誕生日そして俺達がお互いの気持ちを伝えた日。 彼女は約束の通りに早い時間から俺の住むマンションの部屋まで訪ねてきてくれた。 いつもより綺麗にして来てくれた彼女の姿が可愛くて、愛しくて 中に入る前から人目を憚らず思わず抱きしめてしまったのは言うまでもなく。 そして、そんな俺の気持ちを無視して 無情にも携帯の着信が鳴り始めた訳で。 あれから、少しご機嫌を損ねさせてしまった彼女をなんとか宥め 俺はいつも以上の集中力で仕事に取り組んだ。 それでも、予定外のハプニングなどで予想外に遅くなってしまい 携帯画面に映された時刻はPM19:00。 帰っても、もういないかもしれないな・・・・・。 あんなに俺の為に早く来てくれたのに。 そして、今日の為に彼女が楠田さんにお願いしていたのも俺は知っていたのに。 キョーコの優秀なあのマネージャーに今日のことがバレれば恐ろしいことになる。 あの人は、なんだかんだいってキョーコ命だ。彼女には分からないよう振舞っているようだが あれは、妹を盗られた兄のようだ。つまり過保護だ。 「はぁ・・・・・」 それでも、もしかしたら彼女は・・・・・・待っているかもしれない。 急がなければ。 戻ると彼女はテーブルに頭を乗せ眠っていた。 プレゼントと彼女の手作りのケーキと料理をテーブルに並べて。 その頬にはうっすら涙の跡が残っていた。 「ごめん。ごめんね。」 俺は約束を守れなかった。彼女が二人の約束だって大切な約束だと言ったのに。 今度の彼女の誕生日には約束通り二人で過ごそう。 この時の俺達は次があると信じていた。 彼女は「次は破っちゃ駄目よ」と笑顔で言いながら、 俺は「はい。破りません。もうしません。」そう言いながら指切りをした。 でも次なんて・・・・二人にはなかった。 あの時二人で交わした約束は、今はもう消えてしまった。 THE END |